- 9月 21, 2025
- 10月 2, 2025
アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法)
アレルゲン免疫療法は、ある物質に対するアレルギーのある方が、あえてアレルギー原因物質を摂取することによってアレルギーを起こしにくい体を作る治療です。
単なる薬物による症状緩和ではなく、アレルギー疾患自体の修飾(わかりやすくいうと、アレルギー体質の改善)と、それによる全身的な改善効果が期待できます。
鼻症状、眼症状、咳あるいは喘息などの下気道症状が期待できます。また合併するアトピー性皮膚炎に対しても部分的な効果があったとの報告があります。また、アレルギー体質の方は複数の原因物質に対してアレルギーを起こすことがありますが、新しいアレルギーの発症(感作と言います)を防ぐと言われています。
アレルゲン免疫療法、理論上は様々なアレルゲンに対して可能ですが、市販されている治療薬はスギとダニの2つに対してのみです。
およそ8割の方に効果があります。

アレルゲン免疫療法の対象となる方
- スギ花粉症の方
- ダニが原因と分かっている、通年性鼻炎(※1)の方
※1 通年性アレルギーの多くはダニが原因です。
※2 喘息の診断とダニ感作の証明、およびダニに曝露される環境での症状悪化から、ダニアレルギーによるアトピー型喘息と診断します。
※3 ダニアレルギ-によるアトピー型喘息にも効果が期待できますが、舌下免疫療法は喘息に保険適応がありません(皮下免疫療法のみ)。

治療効果発現と期間
即効性はなく、年単位で治療が必要です。3-5年、場合によってはそれ以上の期間、継続が必要です。
舌下免疫療法に年齢の制限はありません。ただし小児では適切に舌下保持できる場合にのみ使用可能です。
受けられない方、または慎重投与(禁忌)
- 当該アレルゲンの舌下免疫療法製剤の投与によりショックまたはアレルギー症状を起こしたことのある方。
- 重症喘息の方
- 悪性腫瘍、または免疫系に影響を及ぼす全身性疾患を伴う方(自己免疫疾患、免疫不全症、免疫複合体疾患など)
非選択的β遮断薬やACE阻害薬、重篤な心疾患の合併があるとアレルギーが起こりやすくなるので注意が必要です(当院では使用できません)。急性感染症罹患、投与直後の激しい運動、口内炎や口腔内の傷があるときは投与を控えてください。
治療上のリスク
投与部位である口腔内の腫れ、かゆみが生じることがあります。特に投与後30分間、治療開始初期の1か月は注意が必要です。数時間で回復することが多いです。舌下免疫療法は皮下免疫療法と比べてリスクは低いですが、アナフィラキシーのような重篤なアレルギーを生じる可能性があります。アナフィラキシーはこれまで国内で数例程度(0.1%未満)、死亡例はありません。当院ではアナフィラキシーに備えて院内に酸素、AED、アドレナリン製剤を設置し安全を確保しております。緊急時には筑波学園病院リウマチ膠原病内科と連携させていただいております。
なお、スギ花粉症の場合男はスギ花粉の飛散時期には開始できません。
検査及び実施の手順
① 問診と血液検査(または皮膚テスト)で、アレルギーの原因がスギあるいはダニであることを確認します。
② 1日1回舌下に薬剤をおいて使用します。
1分間あるいは完全に溶解するまで保持し、その後は飲み込みます。
投与後5分間はうがいや飲食を控えてください。投与前後2時間は入浴や飲酒、激しい運動を避けてください。
投与量は徐々に増量します(スギ花粉症なら1週間、ダニアレルギー性鼻炎なら3日から1週間)。
使用できる薬剤は、以下の3種です。
- アテシア® ダニ(塩野義製薬)
- ミティキュア® ダニ(鳥居製薬)
- シダキュア® スギ(鳥居製薬)
アテシア® ダニ(塩野義製薬)
1日目に100単位、2日目に200単位、3日目以降は300単位を服用します。

塩野義製薬ホームページから引用
ミティキュア® ダニ(鳥居製薬)
治療開始時:最初の1週間は低用量のミティキュアダニ舌下錠3,300JAUを服用します。
2週目以降:維持量となるミティキュアダニ舌下錠10,000JAUを毎日服用し続けます。

鳥居製薬ホームページから引用
シダキュア® スギ(鳥居製薬)
開始後1週間は2,000JAUを1日1回1錠を、
2週目以降は5,000JAUを1日1回1錠を服用します。

鳥居製薬ホームページから引用
初回の薬剤は院内で摂取し、30分間は院内で滞在していただきます。2日目以降はご自宅で、自分で使用していただけますが、なるべく日中、家族など他者の目がある場所での使用が望ましいです。
※間違えて過量を使用してしまった場合は直ちに吐き出し、うがいしてください。
※間違えて舌下に保持せずそのまま飲み込んでしまった場合は、同日は再度の服用は行わずに、翌日からは正しい服用方法で使用してください。
概算費用
舌下免疫療法は健康保険での診療が可能です。
薬代は3割負担でスギ花粉症は1カ月あたり1,800円前後、ダニアレルギーは2,000円前後となります。それ以外に検査や診察代がかかります。
Q&A
Q:スギとダニ両方のアレルゲン免疫療法を同時に受けられるか
A:可能です。まずどちらか一方を開始し、4週間後に両方併用した場合、副作用発現率は単独での治療と同等であることが確かめられています。
Q: 治療開始後に特異的IgE抗体が上昇しました。体に合っていないということでしょうか?
A: いいえ。アレルゲン免疫療法を行うと、一時的に特異的IgE抗体は上昇し、その後緩徐に減少します。