- 5月 11, 2025
- 5月 12, 2025
週1回で済むインスリンが発売された
糖尿病は、インスリン分泌が低下あるいは廃絶しています。内服薬の血糖降下薬では血糖値をコントロールできない場合、インスリンが必要になります。
インスリンは体内で少しずつ一定量分泌される「基礎分泌」と、食事に合わせて急速に分泌され、血糖値の急激な上昇を抑える「追加分泌」があります。
インスリンの分泌が低下している糖尿病の方では、このような体内の変動に合わせて、薬としてインスリンを打つ必要があります。
食事のタイミングに関係なく投与するタイプと、食事に合わせて皮下注射するタイプ。
多い方では、3食に合わせて超速効型インスリンを打ち、さらに持効型を1日1回打ち、全部で1日4回打たなければならないので、負担が大きいです。
この負担を軽減できる可能性のある、持効型として1週間に1回の投与で済ませられるというタイプのインスリンが発売されました。

一般名「インスリン イコデク」;商品名「アウィクリ」
製造・販売元:ノボ ノルディスクファーマ
価格:300単位1キット 2,081円
新薬のため1年間は2週間ごとの通院が必要(2026/1まで)
ご自身で打つ負担の軽減はもちろんのこと、ご高齢の方で家族や訪問看護師などが打つ場合、負担が減らせる可能性があります。
投与してから血中濃度が最高になる時間は、1型糖尿病で12時間(12-36)、2型糖尿病で21時間(12-60)。半減期は、約1週間です。
従来型の持効型インスリンに比べて低血糖が多い傾向があります。イコデクは半減期が長いためいったん低血糖が生じたあと、遷延したり再発する可能性があるため、シックデイの対応もその点を考慮に入れて行う必要があります。
投与量はダイヤルが10単位ごとになっています。
従来の1日1回の持効型インスリンから切り替える場合、それまでに投与していた持効型インスリンの1日総投与量の7倍に相当する量を週1回投与します。細かく対応できる場合は、切り替え後の血糖上昇を防ぐため、初回のみ1.5倍(従来1日あたりの10.5倍)を投与しますが、操作が煩雑になり間違えてしまう可能性のある場合は、初回から1倍(1.1-1.4倍)での投与も許容されます。
毎週1回、同じ曜日に注射します。
忘れた場合は気づいた時点で直ちに決められた量を投与し、その次の投与は4日間以上をあけてから行います。
なお低血糖リスクが高い場合は、持続式血糖モニタリング(CGM)とセットで行うことが理想です。
以下に主な臨床試験の結果を示します。
ONWARDS1試験
インスリン未使用の2型糖尿病に対するイコデク使用により、HbA1cは-1.6%ポイント低下し、グラルギンと比較し非劣性であった。
低血糖出現率は9.8%、一人あたり年間0.3件であった。グラルギンと同様。
ONWARDS2試験
すでに持続型インスリン±それ以外の糖尿病治療薬で治療中の2型糖尿病の方に対し、
HbA1c変化量(26週時点)
・イコデク -0.9%ポイント
・デグルデク -0.7%ポイント
イコデクの方が低下幅が有意に大きかった。
ONWARDS4試験
持続型インスリンと超速効型インスリンの組み合わせで治療中の2型糖尿病の方に対し、
・イコデク+インスリンアスパルト(超速効型) と
・グラルギン+インスリンアスパルト(超速効型) を比較。
HbA1c変化量(26週時点)
・イコデク -1.2%ポイント
・グラルギン-1.2%ポイント
グラルギンと比較し非劣性であった。
低血糖発現率は
・イコデクで51.5%, 一人年間5.64件
・グラルギンで55.7%, 一人年間5.62件
ONWARD6試験
1型糖尿病患者
・イコデク+インスリンアスパルト(超速効型) と
・デグルデク+インスリンアスパルト(超速効型) を比較。
HbA1c変化量(26週時点)
・イコデク -0.47%ポイント
・デグルデク-0.51%ポイント
デグルデクと比較し非劣性であった。
HbA1c変化量(52週時点)
・イコデク -0.37%ポイント
・デグルデク-0.54%ポイント
デグルデクの方が有意にHbA1c低下量が大きかった。
低血糖発現率は
・イコデクで 一人年間19.9件
・グラルギンで 一人年間10.4件
イコデク群で優位に高頻度であった。
とくにイコデク投与2-4日後に低血糖発現が多かった。