- 3月 15, 2025
帯状疱疹の経過・予防と治療
水痘・帯状疱疹ウィルスの再活性化が原因です。
初めて水痘ウィルスに感染した場合には水ぼうそうとして現れるが、水痘が治った後も神経の中に潜んでいた水痘ウィルスが、体のストレス・疲労・加齢・免疫抑制剤の使用などによって活動を再開することによって発症します。神経に沿って広がり皮膚に帯状の分布を示すため、帯状疱疹と呼びます。例外を除き、体の片側だけに生じます。
初感染→水ぼうそう
再活性化→帯状疱疹
40歳くらいまでの年齢では、1年で300人に1人くらいにおきます。40歳を過ぎると加齢とともに発症率が増加し、70歳で100人に1人におきるようになります。
図:以下のような神経の分布に沿って帯状疱疹が出現する

経過
•発症から1週間は赤く盛り上がった発疹がいくつも集まって出現します。その出現範囲は神経の分布に沿っていて、腹部側と背中側にまたがり、帯状にみえます。ちくちくして痛く、ぷつぷつとした丘疹が数個現れただけで帯状になっていない段階では一見虫刺されのように見えることがあります。徐々に水疱状に変化してきます。ピリピリ、ずきずき、焼けるような痛みを伴います。
•1週間ほどで水疱が破れて、ぐちゅぐちゅした湿疹や浅い潰瘍ができます。
•2週目ほどでかさぶたになります。
•3~4週間で治癒します。痛みも徐々に収まります。
• 皮膚がきれいになっても神経痛が残ることがあります。神経痛は時には数か月~数年と長期に及びます。この点で、皮膚の問題よりも神経痛の方が問題と言えるかもしれません。
写真:帯状疱疹発症後5日目 (photo ACより)

予防
ワクチンによる予防が効果的です。ワクチンには組み換え蛋白ワクチンと生ワクチンがあります。
シングリックス®は組み換えサブユニットたんぱく質ワクチンです。50歳以上で97%、70歳以上で90%の予防効果を発揮します。10年間効果が持続するとされています。ただし上記は接種初期の予防効果で、少しずつ予防効果は落ちていきます。
通常2~6か月空けて2回接種します。リスクの高い方には1か月空けて2回目を接種することもできます。価格は1回2万円強x2回と高いですが10年間という効果の持続期間を考えると年間では4千円程度のインフルエンザワクチンの費用とさほど変わりません。当院では1回22,000円で提供しています。
ところで、組み換え蛋白というのはなんでしょうか。ウイルスを構成する成分のうち、感染にかかわる部分(サブユニットたんぱく質)のみを遺伝子組み換え技術によって設計し、培養細胞などを使って増やしたのち、精製したものを接種する方法です。生ワクチンや不活化ワクチンに比べ、ウイルスそのものを使用しないので、副反応が起こりにくいとされています。
特に、リウマチ性疾患の治療のためJAK阻害薬を使用する方には特にシングリックスの接種をお勧めします。JAK阻害薬を使用すると帯状疱疹の発症リスクがおよそ3倍程度になるためです。JAK阻害薬によりリスクは3倍になってもシングリックスによるリスクは0.1倍(90%予防)になるので、単純計算すると3×0.1=0.3倍となり一般の方よりもリスクは低いことになります。
なお帯状疱疹ワクチンには生ワクチンもありますが、免疫力を低下させる薬剤の使用中は生ワクチンは行わないようにしてください。生ワクチンに用いるウィルスは弱毒化させているとはいえど、免疫低下した状態ではウィルスが体内で想定以上に増殖し悪影響がでないとは言い切れないからです。
2025年4月から定期接種化される(接種時に費用が補助される)予定です。原則65歳以上の方が対象になります。補助額は市町村それぞれの判断となります。
治療
帯状疱疹の治療はできるだけ発症後早期に開始することが重要です。帯状疱疹であることに早く気づいて治療開始するのが早ければ早いほど重症化を防げ、回復も早くなり、神経痛も残りにくくなります。皮疹出現後24時間以内に抗ウイルス薬が投与されることが治療効果を得るためには必要です。72時間以降に抗ウィルス薬を投与されても十分な治療効果は期待できません。ただし皮疹出現5日以降であっても、新規の皮疹出現が続いている場合、合併症を伴う場合、帯状疱疹後神経痛のリスクが高い場合には抗ウィルス薬で治療した方が良いです。
早く気づいて、医療機関を受診することが非常に重要になるため、帯状疱疹とはどんな疾患かを典型的な写真をみるなどしてあらかじめ把握しておいていただきたいのです。
代表的な抗ウィルス薬
一般名 | 承認名 | 腎機能による量の調整 | 使用量と期間 |
バラシクロビル | バルトレックス® バラシクロビル® | 必要 | 1回1000mg 1日3回 x 7日 |
ファムシクロビル | ファムビル® | 必要 | 1回500mg 1日3回 x 7日 |
アメナメビル | アメナリーフ® | 不要 | 1回400mg 1日1回 x 7日 |
なお、ヘルペス(単純疱疹)の治療では、患者さんがあらかじめ薬をもらっておいて、ヘルペスが現れたときに自分で判断しJAK阻害薬をて早期に治療開始するPIT(Patient Initiated Therapy)というやり方があり「ファムビル」や「アメナメビル」を保険診療で使用することが認められておりますが、現時点(2025年3月)でこのやり方は帯状疱疹に対しては認められておりません。
神経痛が残ってしまう場合は、神経痛のための緩和治療を行います。代表的な薬はリリカ®(プレガバリン)、タリージェ®(ミロガバリン)、ビタミンB12などです。
他人にうつるか
健康な大人には抵抗力を持っていることが多くほとんどうつることはありません。
うつりやすく、周囲に帯状疱疹の方がいる場合に注意が必要な方は、
•水疱瘡にかかったことがなくワクチンを打ったことのない乳幼児
•ステロイドや免疫抑制薬を使用している人
•HIV感染などの免疫力が低い方
などです。学校に通学されている方は、学校保健安全法により「すべての発疹が痂皮化するまで」登校できないことになっています。
帯状疱疹の対策まとめ
発症したらできるだけ早く治療開始する。
帯状疱疹とはどんな疾患(外見、分布)かをあらかじめ知っておく。
ワクチンで予防する。
参考資料:
1 J Med Virol 81: 2053-2058, 2009
2 photo AC